<くびれ雑学>

中世ヨーロッパの貴婦人も、鯨の骨でできたコルセットでウエストをぎりぎりに締め上げていた。あばら骨が変形するほどの締め付けようで、ちょっとしたことで失神するほどのものだったらしい。その後起こったフランス革命で貴婦人たちは一時コルセットから開放されたのだが、短期間で再び復活した。『大草原の小さな家シリーズ』にもコルセットを締め上げるシーンがあったと記憶している。
なにゆえ、人は昔からくびれたウエストを好み続けてきたのだろうか?

竹内久美子氏著”小さな悪魔の背中の窪み”(新潮文庫)に面白い記述があったのでこちらを引用しておく。ものの見方を変えてみるとこんなにも面白いぞという好例。

「美をしかけるもの ・・・女の魅力はどこから生まれるか

美しい女の条件としてすぐに思い浮かぶのは、丸みを帯びた、しなやかで柔らかな肉体、白く透き通るような肌である。きめこまかな肌、艶やかな髪、バスト・ウエスト・ヒップのメリハリの利いたプロポーション、目、特に瞳が大きいこと、唇の赤いこと、顔のパーツがそれぞれバランスよく配置されていること、等々である。個人的な好みを入れ始めるときりがないが、最大公約数的なことを言うとだいたいこうだろう。足は長いに越したことはないが、男の場合ほど問題ではない。背の高さもほとんど関係ないようである。

なぜそれが女の魅力になっているのかを考え始めると、どれもこれも気になって仕方がない。しかしここでは色の白さ(それも、透き通るように白くて血色がいいこと)、プロポーションのよさ(特に腰がくびれていること)の二つの問題に絞って論じてみることにしよう。

〜中略  (男が腰がくびれていてなおかつ出るところは出た女性を選んできたという説の発展。くびれは妊娠していないことをさすが、少なくとも受胎から数ヶ月を経てでないと妊婦はお腹が目立たない。となると、この説も女を選ぶ上での決定的な要素ではない・・)

結論から言うとそれは、回虫、ギョウ虫などの腸管寄生虫、あるいは住血吸虫などが、そうはたくさんいませんよ、というウソ偽りのない証明なのである。腸管寄生虫に占拠された腸は膨張し、腹全体がせり出してくる。肝臓、脾臓などが肥大する。いずれにしても、それら寄生虫に冒されつつも腰をくびれさせておくのは至難の業だからである。

そもそも腰がくびれているなどという珍妙な動物は、人間をおいてまず他には見当たらない。ゴリラもチンパンジーも、オランウータンも、もちろんその他のサル類も、皆ずん胴。オス、メスの区別なくずん胴。哺乳類へ範囲を広げてみても同じことである。しかも人間にしたところで、子供のころは皆おなかの近辺はぽこんと膨れているのである。それは思春期になるといつのまにか引っ込んでしまう。女の腰のくびれは、これから子を産もうとする女にとっての、寄生虫はいませんよという保証書のようなものではないだろうか。

〜中略

女が男を見る場合、見抜こうとするのは彼の本質的な寄生虫耐性、つまり遺伝的に寄生虫に強いかどうかである。女が見るべきは、男のこれまでの人生の寄生虫歴が積算として現れているような体の部位ー つまり、それが足の長さであり、背の高さなのである。

一方、男が女を見る場合、彼が最も重視すべきであるのは、彼女が現在寄生虫にひどく冒されていないかどうかである。彼女の寄生虫歴も気にならなくはないが、それよりも大切なのは今の状態である。なぜなら、男にとっての最重要の問題は彼女が自分の子を、丈夫に産み育ててくれるかどうかである。

〜中略

人間は樹上生活を捨て、地上に新たな生活の場を発見した。人間は相手が寄生虫に強そうかどうか、現在ひどく冒されていないかどうかを見極める必要に迫られた。自分が寄生虫に強いということ、現在持っていないということをアピールする必要にも迫られた。これが美の期限であり、美しい、カッコいいという感覚の起源ではないだろうか。

美をしかけるものー それは寄生虫だったのだ。

・・・世の男性のみなさん、みゅったらの腹に寄生虫はわいていませんが、脳みそはよく沸いているといわれます。あ、腹の虫もいるな、3時間おきに鳴くヤツが。 もどる